近所の日本食料理店

私が住んでいるのは正確に言うとミラノ市内ではなく、そこから北に20kmほど離れた小さな街です。人口は3万人強のよく言えば落ち着いたところなのです。

先日、マロー(犬)の散歩をしていると、赤毛アフロヘアーのサンティーナという大変に犬好きなマダムと出会いました。マローはサンティーナが大好きで飛びついて喜んでいましたが、「あなた日本食好き?」と尋ねてくるのです。「そりゃあ僕は日本人ですから好きですよ」と答えると、「あそこに日本食レストランが出来たじゃない。食べにいってきたのよね−」と言うのです。

そういえば、以前銀行だったところが無くなって日本食レストランになるべく改装されていたことを思い出しました。ミラノには中国の人が経営しているリストランテ・ジャポネーゼが星の数ほどあるので、私はまた同じようなものが一つ増えたというくらいにしか感じていなかったのです。

サンティーナは「おいしかったわよー。友達と50ユーロしたけど」といつもの低い声で言いました。50ユーロというと6500円くらいです。イタリア人の通常の家計事情からすると奮発しているのではないでしょうか。

「日本人が働いているのよ」と、サンティーナは言ったのです。私は心の中で、まさかね、と思いました。日本人がこの小さな街で働いているわけがないので、きっとサンティーナは日本人と中国人の違いがわかっていないのです。

サンティーナと別れてから5分くらい歩くとそのお店が見えてきます。私は好奇心から、まだその夜開店前のリストランテ・ジャポネーゼの入口に居たお店の人に話しかけてみました。「すみません、ここって日本の人が働いていますか?」

「いるよ、おーい!」

え! キッチンから出てきたのは確かに日本の人でした。 うわーこんにちは! お互い非常に驚きました。

この街で日本人の握る寿司が食べられる日が来るとは。先日、改めてお食事に伺ったところ、さすが! 大変に美味でした。疑ったサンティーナ、scusa ! (ごめんなさい)

(山根 力)