日本とイタリア、どっちが住みやすい?

日本とイタリア、どちらが住みやすいですか? と尋ねられることがあります。

外国に住んでおられる方であれば避けて通ることができない(?)類いの質問です。正解なんてあるわけはないのですが、慎重に答えるようにしています。

この質問をした人は心のどこかで、自分の住んでいるところが良い国だと言って欲しいと思っているかもしれません。なので日本の方に「そりゃイタリアです」なんて言おうもんなら、気分を害されるでしょう。イタリアの方に「そりゃ日本ですよ」なんて言おうもんなら「じゃあ国に帰りなよ!」と思われるでしょう。

なので一番無難な答えは 「どちらにも住んで、良いところと悪いところがあるのを見ているし、決めることは出来ない」になるでしょうか。でもこれではちゃんとした回答にはなっていないので、「それはわかりますが、あなたはどう思っているんです?」と突っ込まれることがあります。

それで、「私は日本で生まれ育ったし、30歳過ぎまで日本で仕事もしてきました。いまやイタリア語は不自由しないし、仕事もあって、永住権も取得したのでイタリアの方が住みやすく感じるけれど、いつでも日本には行きたいと思っているんです…」などとクドクドと説明して納得してもらいます。

イタリアには仕事が無いが、人と繋がって生きている実感とワインとピザがある。

日本にはストレスがあるが、刺激的な情報とラーメンと寿司、私の故郷京都がある。

両方の状況を知っているからこそ見えてくることもある…。

ボーっと生きるのではなくこういう事について深く考えてみるのはとても重要なことだと思っています。なぜなら住む(イタリア語でVivere)ということは生きる(やはりVivere)ということだから。こちらには難民の人も沢山おられます。命をかけてアフリカや他の国からヨーロッパに移ってきた人たち。「AとB、どっちが住みやすい?」という質問なんて到底できません。

大切なのはどこに住むかではなく、与えられた命を使ってどう生きるかですね。次に尋ねられたらそう答えてみます!

(山根 力)