「発音のはなし」

腹式呼吸で声が大きいこと。実はこれはイタリア人の特徴の一つです。私の家の近所の人(イタリア人)の声がとても大きいので、喧嘩が始まったのかしら? と思ったら単に挨拶をしているだけだったということは日常茶飯事で、もう慣れてしまいました(笑)。

イタリア語の発声自体に横隔膜をしっかり用いるので、イタリア人は誰もが意識せずにやっていることですが、音がオペラのように響くんです。

例えば何か面白いことを聞いたときに日本語で「へー」と言いますね。この「へー」は、普通、喉のあたりだけで発声される軽い感じです。でも日本語を話すイタリア人が(日本語で)言う「へー」は、お腹から出る良いく響く音の「へえー」なんです。

Buongiorno(こんにちは)を日本語風に 「ボンジョルノ」 と発音するとなんだか軽い、訛ったイタリア語のようです。
なので、イタリア風にしっかり通じさせるためにはお腹に軽く力を入れて、ブォンジョールノ! (「ル」は巻き舌で)と、響く通る声で自信満々に言わないといけません。

声を響かせることは通訳時に大いに役立ちます。複数の人の間に立って言葉のやりとりをするわけですから、まずもって通訳者が何を言っているのかが聞こえなければお話しになりません。ある通訳者さんが自分の長所として「声が聞きやすいと言われたことがあります」と仰ったことがありますが、実際これはかなりのアピールポイントになると思います。

私の場合は感謝すべきことに生まれつき(?)少し通る声なのでそれほど苦労はしませんが、きっと随分努力しておられる通訳者もいらっしゃることと思います。

響く声を出す一つの方法は、気持ちを込めることです。先ほどの「へー」も、心底驚いたりすると「へぇーっ!」っと、お腹から声が出ますよね。言葉が違っていても人と人が出会って面と向かって話をする場合には、抑揚の少ないアナウンサーのようではなく、もっと気持ちが言葉に乗るものです。それとトーンが合致するように通訳がされるならば、声を張り上げるまでもなく自然と聞きやすい声になっているはずです。

ブォンジョールノ!  も、お腹に力を入れて…などと考えて発音するものではありません。人と出会った時に、会えてうれしいです! という(強い)気持ちがあればあら不思議。勝手にそうなるんです。気持ちを込めて良い発声。通訳者だけでなく、通訳を介して話される皆さんも意識してみてはいかがでしょうか!

(山根 力)